(0181)黄葉が舞い落ちては音も無く積もる

曇天の朝の下
湿った黒土の上に
黄葉が舞い落ちては
音も無く積もる

空気はひんやり冷たく
木立ちの色合いは響き合い
薄朝霧の中で調和する

「彼」は落葉を踏む時「彼」に触れ
晩秋の水面を見る時「彼」を見
野鳥の鳴声を聞く時「彼」を聞く

朝飯を喰うのが面倒臭い者は
美味しい朝飯は永久に食えないだろう

中空に歩を進める時 新次元を踏み締め
闇黒に目を凝らす時 見えない物が見え
沈黙に耳を澄ます時 その冗舌に驚異する

足らずな雨粒が
途惑いがちに落ちては止む
臨終正念とは日々是好日

無心の姿は美しい
呼び止められて振り返った少女の顔
思考の隙間の無い剣士の横顔
そして自意識で完全武装した者もまた
その自意識に集中し切っている姿は無心である

―― 如何なる独白も対話もメタローグである
―― 如何なる他者も自己のメタである

吉祥寺百景(082)19871108

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