 この星を真東に向かったＡとＢは還って来なかった。ＣとＤが二人の救助探索を兼ねて同じルートを辿った。二人はＦＨ（２人乗りフライトホバー）で地上すれすれを運航した。やがて地平線の向こうに隠れた母船とのコンタタトは途絶えた。電波を反射しないこの星の大気のせいだ。
やがて前方に少女の死体が発見された。彼女は美しく、全裸で、性器だけがなかった。少女の細胞片をＦＨのコンピューターで分析してみる。その結果単位生殖生物であるらしく、死因は外傷や病気によるものではなく、不明とのことだった。寿命が尽きたという可能性大とも。サンプルとしてＦＨに乗せてさらに東進する。
やがて岩場のあちらに２体、こちらに３体と美しい少女の死体が発見される。その数はだんだん増えていく。ＦＨのコンピュー夕ーはその散逸状態をシュミレートして、やがて地表が死体で覆われるであろうことを予測する。そして丘を越えた所で二人はその現実をまのあたりにする。二人は引き返すか話し合った。結局任務遂行を確認しあったのだが、使命とは別に東進させる磁力が無意識層に浸透しているのには気付かないまま、死体の上をＦＨは進む。
そしてタ暮れ。後ろから光が射し、少女の海は朱く染まった。だがそれは不快な光景ではなく、心の中に何らかの振動を与えているようだった。閣の中ＡとＢを見逃してしまう可能性もあるのでＦＨのオートマティック航法をやめて野営することにする。静かに着地するＦＨ。その重みで下の少女達が音を立てて潰れる。舶外四方に広がる娘連の死体。それらは不気味な感覚ではなく自然の壮観な風景という印象を与えた。しかし絶景であることに変わりはない。
コンピュータ―がこの生物は大量に産卵してそれが総てふ化するであろうことを類推する。夜中にいっせいに生き返っておれたちを襲うなんてなしだぜとＣ。降りて来いよと外でＣを呼ぶＤ。たとえ異星の生物でも死体を踏付けるのはどうもなとＣ。Ｄはその場に横たわりなら、こっちも死体になるかと言う。悪いジョークだぜとＣ。死体の上を転がりながら、やあこいつはジュリアに似ているな、こっちりはアンそっくりだと言うＤ。
吉祥寺百景（０４３）19861230
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