| (19850320) 夜半過ぎ、外は雨が降っている。とても静かだ。心は落ち着いているのだけれど、経済的見とおしを考えると、誰もいない野原で静かにじわじわと死にかけているような気がする。絶え間なく流れ出る血が確実に体力を奪い、死と言うものがどかんとではなく、へなへなとやってくるのを為すすべもなくただ自分で感じている、野原の兵士のよう…。どうにかしなくては、どうにか。 (19850425-1) ２週間前に髪を切った。衝動であり、理由はない。十数年振りに耳を出したので恥ずかしい。会う人会う人が、どうしたのかと尋ねるが、その都度それなりの理由を考えなければならないので面倒臭い。｢春ですから｣とか｢出家の気分で頑張ります｣とか、自分でも訳のわからないことを言ってごまかしている。 (19850425-2) こんなにまばゆい春の昼下がり 部屋に篭るのは緩やかな自殺だ 水面を渡る微風の行くその先で  微笑むように揺らぐ新芽の輝き 遠い追憶の中を流れゆく小川を 共に覗き見たあの長い髪の少女 木漏れ日の中で振り向いた時の 無垢なる面差しを永遠に愛する 逃れられぬ追憶逃しがたき記憶 岸向こうの木立から流れ来る歌 白いブラウスを新緑に輝かせて 眠り続ける妹の揺り篭を押す娘 もし明日が世の終末だとしても 今日は風の野辺に出て花摘もう はこべたんぽぽもくれんなずな みずきれんぎょうゆきのした れんげなのはなみはなのしずく… 吉祥寺百景（０１４）19850420,19850425 |
