（３５）変容の道具としての音楽

音は我々が使える変容のための最も力強い道具の一つである。私は数年間セレモニーや瞑想に音を使う実験をしてきた。そしてただ母音の唱和や種々の詩句を歌うという事が、たとえエネルギーワークをほとんど経験していない人でも敏感である肉体／心に効果を及ぼすという事を知るに至った。

精神的成長の道具である音の変容力の例として、私が自分自身のスピリチュアルな進化を回顧して「ＯＭ」という音の実験を始めた時、すぐに私を大いなるスピリチュアルな直観と普遍的生命力エネルギーとの共鳴へと導く、意識の超越状態へたやすく移行できたという事があげられる。

我々自らができる事の中で自然に戻し、癒してくれる最良の事の一つが歌うという事なのに、一般のアメリカ人の多くは歌い、詠唱し、発声するという事をあまり心地よく感じてはいない。現代社会における歌うという事の能力の欠如は明らかに、我々が音楽と呼んでいるとても重要でスピリチュアルな食べ物が、録音された音楽として供給されているという事実による。レコードミュージックへの我々の依存が大きくなるほど、歌いたいという気持ちや歌う能力が使われなくなっていってしまうのだ。

この事は、これら外的音楽の類が我々にとって不可欠な体の中にある調和した音の振動を創り出す内的経験を供給できないので、最も好ましくない状況である。さらに悪い事に、我々はしばしば我々の内的存在を癒すよりも興奮させるような音楽によって爆撃されつづけているのである。

我々の音による自己治癒能力の回復を考える時、つい最近までの昔の人達は歌うという事に心地よさを抱いていたという事を思い出さなくてはならない。実際「古き時代」にはほとんどすべての人が歌っていたのだ。歌はすべての人の生活の一部だった。この土地のほとんど文化と縁のない農民ですら日々の生活の一部として歌っていた。

組織化された宗教の最良の贈り物の一つは、聖歌の調和的な振動共鳴を共に創る事によるコミュニケーションをもたらすという機能である。多くの人達がそれなりの理由で教会に足を向けなくなったので、地球はかつて定期的に自分に向けられていた祝福である調和した音の振動がなくなってしまい苦しんでいる。

全てではないにしてもヨーロッパの大聖堂、教会、礼拝堂の多くが、聖職者や先住者や異教の地脈師によって確定されたパワースポットの上に設立されているという事を思い出してほしい。そうすればこの場所で創り出された調和に満ちた音が、直接惑星のグリッドに送り込まれる様を知る事ができるだろう。ゴシック建築の大聖堂は人間の姿に対応した十字形に建てられており、その聖歌を歌うセクションは喉のチャクラに対応している。十字の頭から１０区分相当だけ下に大聖堂を置くという建築計画の元にこの建築はなされている。

我々が音を用いて環境に影響を及ぼす生来の能力を回復するには、人間にとって歌い唱和する事が自然であるのに、音楽を生み出し経験したいという我々の自然な欲求に対して多くの人が録音された音楽を用いてしまっているために、そのような状況になってしまっているのだという事を先ず思い出さなくてはならない。しかし我々は力があると考えられている音を作り出す訓練によって、喉のチャクラのコントロールを回復できる（それをする事はとても気持ちがよい）。それらの音の最も基本であるのはＡ，Ｅ，Ｉ，Ｏ，Ｕ（そしてその派生としてのＡｈとＥｈ）である。自分の声を使う事が気持ちよくできるようになったら、もう自分の声を人前で用いても恥ずかしがらずにすむ事に気づくだろう。

　　　母音の吟唱

あなたが心地よいもしくは安全だと感じる場所で、それぞれの母音発声の訓練をしなさい。それぞれの母音を吟唱する時は、深く息を吸い心地よさの続く限り発声する事。一度に一つの母音を繰り返し発音してみなさい。このようにした時あなたはそれぞれの母音を発声する前と後とでどのような感じがするか意識してみよう。

同様にして母音を変えてみた時、唇の形がどのように変わるか、また口の中の舌の位置がどのように異なるかに意識を向けてみよう。それぞれの母音の正確な形成は、唇と舌の形と位置の違いによっている。もし一つの母音の位置の限界を超えると異なる母音の発音になる。あなたは「Ｉ」「Ａ」そして「ＡＨ」がとてもよく似た口の形であり、しっかり意識的にそれらの母音を発声しないと、異なる音になってしまう自分に気づくだろう。（プロの歌手はこれを練習しているので、実際彼らが歌を練習しているのを見れば、あなたはその口の形がおおげさなまでに強調されている事に気づくだろう。）

母音の実験をしている時、あなたは実際に古代の深遠な変容の技術に従事しているという事に気づく。あなたは唱題しているのだ。私の知る限りにおいての全ての聖なる題目（マントラ）は、Ｈ，Ｌ，Ｍ，ＮそしてＲというただ添えられているだけの子音以外の母音に深く依存している。この事からあなたは多くのマントラ的な響きが、子音を伴った母音の連結に依存している事に気づくだろう。母音の発声以外に何もしないでいると我々の体を通るエネルギーを少し動かせるという事は、特筆すべき面白い事実である。この事は我々の理解できないヘブライ語、サンスクリット語もしくはネイティヴアメリカンの語句を暗唱する必要がないという事を意味する。

我々の逐語的な言語は文字に対応する音のさまざまな組み合わせによって構成されている。我々の文字／音は母音と子音の２種類の形で理解されている。母音は舌が口蓋の上にも下にも接しない位置に保つことで生み出される。子音は発音する時、舌が口蓋の上か下に接するという事実で区別する事ができる。この事はＡ，Ｅ，Ｉ，Ｏ，Ｕと舌が口蓋のどこにも接していない母音を発声する時、また子音を発声する時にたやすく理解できる。