Ｃ、音声で記録を取る。ＡＢ発見できず。幻想かと思われるような美しい少女の海の上で野営。我々の任務は…任務は…と言いつつ蒼くなる。おいＤ、おれたちの任務は何だった？何だってそりやあおまえ…。二人共それを忘れ去っていた。コンピューターは分析類推機能以外は可動しなかった。
とにかく食事を取り眠ろうとする。風が出てきた。空は雲一つなかった。この星には雲は存在しないのだろうか？満天の星。その光の下で果てしなく続く若い肢体の動かない波。Ｃの眠りは様々な夢で妨げられた。遠くで女の歌声のようなものが聞こえた気がした。風か？不安になってＤを呼ぶＣ。返事はない。起き上がって見ると口ックされたドアは開いていた。
Ｄはいない。レイガンをつかんで外に出るがどこにも見当たらない。地平綿の向こうまで行っていなければいいのだがと思いつつ、発信探知機のスイッチを人れる。モニターは東の地平線ぎりぎりにＤの所在を示していた。ＣはＦＨを動かして追うことにする。追跡レンジを広げるため可能な限りホバーを噴かして上昇する。ちょうど夜明けだ。ホライズンの向こうから朝日が昇ってくる。ＤはＦＨを前進させた。
朝の光の中で死体の海に変化が表れた。そのオレンジ色の光を浴びると次々に灰になって消滅していくのだ。Ｃはそれを眼下に見ながらＤを追う。目的の地に神殿のような物が見える。
Ｄはその中に全裸で倒れていた。衰弱して老人のようだった。抱き上げるとひきつったように弱々しくしく笑った。あいつら、あいつら一個の精子も無駄にはしないんだ。なに、どういうことだそれは？逃げろ、早くしないとあいつが来るぞ、あいつ…、性器のある女が…。Ｄはそのまましおれるように身をよじると息断えた。ＣはＤの死体をＦＨに運び込み、発進させた。倉庫の中にはまだ陽を浴びていない少女が転がっていた。しかし外の死体の海はほとんどが消滅して、残ったものもその風化現象の最中だった。
混乱の中でＣは一路西へ向かった。Ｄの言葉の意味は？そもそもおれたちに与えられた任務とは？Ｃは自分の気がおかしくなっているのではという恐怖と戦いながら母船のある方向に全速で向かった。あそこへ行けば総ての謎が解けるかもしれない。あそこに戻りさえすれば…。
吉祥寺百景（０４４）19861230
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