(19860916-1) 喩え話それ自体にはなんら論理的説得力はない。
(19860916-2) 意志は運命の抵抗によって試される。
(19860916-3) 動物は殺される時、その恐怖が毒としてその肉に残るという。「彼」はほとんど自ら進んで食肉はしないが、外食の時などでどうしても食べる時もある。だが、毒をそのまま体内に取り入れるのではなく、食すに及んで強い生命力によって、意識せずとも自然に解毒しているのではなかろうか。「ごめんね。しっかり血肉にするからね。」この気持ちが本当ならば、毒を中和するのも本当だろう。肉に限らず、人工食物、都会の汚れた空気、その場の悪しき雰囲気などに必要以上に煩わされていては、いざという時ベストコンディションでいられないからね。
(19860930) この日鎌倉に立ち寄ってから横須賀に帰る。江ノ電の駅を降りて、海の見える高台にある喫茶「あすなろ」に入る。窓辺に座ると、右には海が、そして左のドアガラスの上には映り込んだもう一つの海があった。人間には本物の風景を愛する者と、鏡の中の風景を愛する者とがいるようだ。彼は鏡の中の世界の方に、より魅力を感じてしまう。鏡の中が単なる幻ならば、鏡の外もまた幻なのだ。それにしても海は今日、緑色の波だ。
吉祥寺百景（０２５）19860916,19860930
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