(522)水の温度と365

 温度とは堅苦しく表現すれば、「熱がひとつの物体から他の物体へ移動する傾向の強さを指示する尺度」のことだ。もともと温度は人間の皮膚感覚の熱い冷たいを相対的に表すものであったが、この感覚的要素を排除して計量化したものである。現在の温度の単位は1742年、スウェーデンの科学者セルシウスが考案した、水の融点と沸点の間隔を100分割した温度目盛りによる。1848年、イギリスの物理学者ケルビン卿はこの伝統を尊重しつつ、物質の個別的性質から独立した熱力学的な温度目盛り(絶対温度)を提唱した。その他にも華氏度、列氏度、ランキン度などもあるが、煩雑なので一部の国以外では使われていない。難しい話はさて置き、簡単に言ってしまえば単位目盛りとしてのセルシウス度とケルビン度は等しく、絶対0度は0ケルビン度であり−273.15℃である。また水の融点0℃が273.15K(ケルビン度)である。

 ところでセルシウスが水の融点と沸点の間を100分割したので百分度(degree centigrade)と呼ばれていたが、これがもし1000分割されていたらどうなっていただろう。人間の平均体温は36.5℃付近という表現ではなく、365℃付近ということになっているわけだ。これはどういうことかというと、10進法的な小数点の移動と相似性が、単位設定の変更によって同じ数になるのであれば、それは同じ数として同型対応視が可能であるということである。問題は10分割か100か1000かという、選択する側の世界に対するその時のバランス感覚であり、水の性質や本質は変わらないという事実である。このことはクラドニパターンにおける基本振動数を1とした時の3.65という値にも言えることである。基本の値を1ではなく100と設定すれば365と見ることができるのだ。

 なおこの温度目盛の中においても、人間の平均体温の10進法ホロンが地球の1公転365日に照応しているとすれば、月の公転自転周期27.3日に呼応しているのは絶対0度である−273.15℃の10進法ホロンであろうか。ところでこの水の温度には面白い対称性がある。水に限らず臨界温度というものがある。それは圧力によって気体を液化する場合、ある温度以下でないといくら圧力を大きくしても液体にならない限界の温度のことだが、水の臨界温度は374.1℃である。この374.1℃は水の沸点100℃からさらに274.1℃上にあるが、一方絶対0度の方は水の融点0℃から下方に273.15℃にある。すなわち水の3態である固体(氷)、液体(水)、気体(水蒸気)の2つの界面、融点0℃と沸点100℃を介してほぼ対称的な数値になっているのだ。

 また13の月の暦を意識して364K(ケルビン度)をセルシウス度に変換するとほぼ91℃となる。91は1年364日の1/4であった。また365Kは同じく92℃に近似するが、92は自然界に存在する元素の数であり、最大の元素U:ウランの原子番号だった。また音速は空気中では0℃で331m/sであり、温度が1℃上がるごとにその速度を0.6m/sずつ増す。したがって55℃の時及び水の臨界温度374.1℃の時の音速は以下のようになる。

     331+0.6x55=364(m/s)
     331+0.6x374.1≒555.5(m/s)

 この55℃の時に364m/sであることと、水の臨界温度374.1(=273.1+100)℃の時555.5m/sであることとの間に何らかの対称性があるのだろうか。55は10の3角数であり、また10番目のフィボナッチ数でもあるが、10進法との関係も見ようとするのは少し穿ちすぎだろうか。もちろんこれはまだ論理的な対応証明ではなく、異なる階層や領域の間にある数値的対応にはその裏に直接目には見えない何らかの照応があり得るという発想に基づいた「数の冒険」、もしくは数の駄洒落である。