人間の成人が腋窩温、すなわち脇の下の体温を午後１〜４時の間に測定すると３６．８９±０．３４℃である。また体温計を舌の下に入れて測る口腔温は腋窩温よりも約０．４℃高く、また直腸温は約０．８℃高い。体温にも１日周期で変動するサーカディアン・リズムがある。一般には早朝は低く夕方には高くなるが、その差は口腔温で０．７〜１．３℃ほどであり、脳内の生物時計によるものだと考えられている。また午前５〜６時頃の最も低い体温を基礎体温という。幼・少年の基礎体温は成人より高く、また女性はそれが排卵後０．６℃上昇し、次の月経期に下降する。体温は測定部位によって異なりはするが、人間にとって暑くも寒くもない快適な時の平均皮膚温は３４℃である。また裸で安静にしている時、環境の快適温度は２９〜３０℃である。この帯域は着衣により低温側に移動する。

　動物においては哺乳類と鳥類だけが恒温動物で体温が一定に保たれており、それ以外はすべて変温動物である。鳥類の体温は３８〜４２℃で、その中でも小型の鳥は大型のものに比べてより高い。哺乳類を見ると、単孔類（ハリモグラ）が３０〜３１℃、有袋類が３５〜３６℃と低いほかは、一般に３６〜３８℃である。昼行性の動物の体温は夜間は昼間より低く、夜行性のものはその逆で、体温の日変化差は普通０．５〜２℃である。そして人間の平均体温はというと、３６.５〜３７℃である（下図表は大日本百科全書より）。この人間の体温の３６．５℃と地球の１年３６５日という数値的相似とが偶然以上の意味があるのではないかと言うことを、温度の計測単位に用いられている摂氏（セルシウス度）というものと、それを定める元になった水というものを見ていくことにしよう。　

	恒温動物の体温（℃）
	哺乳類	ネズミ	３７〜３８
		ウサギ	３８〜４０
		クジラ	３６〜３７
		チンパンジー	３６〜３８
		サル	３７〜３８
		ヒト	３６〜３７
		コウモリ（冬眠期）	７．５
		コウモリ（活動期）	３７
	鳥類	ニワトリ	４０〜４２
		フクロウ	４１

　ところで人間の体温の上限は４４〜４５℃で、これ以上だと酵素などのタンパク質が非可逆的に変成し始めて、急速に死に至ってしまう。また体温の下限は３３℃で、これ以上だと意識が失われてしまい、２７℃で死に至る。水の比熱容量、つまり単位質量のものを温度１度上昇するのに必要なエネルギーには最小値（３５．５〜３６．５℃）が存在するが、それより温度が高くても低くても比熱容量は大きくなる｡人間の成人の体温は３６．５〜３７℃でこの比熱容量の付近にある（※）。これは極めて省エネルギーであるということだ。また生物にとって１５，３０，４５，６０℃付近には水にとっての界面の構造変化があり、生理現象に好ましくない温度である。これらの温度の前後で生理現象は不連続に変化する。進化の過程において生物はこれらの転移温度の間で生存するようになったが、哺乳類は生存最適温度として３６．５〜３８℃を選択したのである。そして多くの哺乳類の体温はこの温度になっている。

　人間の比熱（ある物質１ｇの温度を１℃だけ高めるのに要する熱量のこと）は０.８３である。水の比熱は気体を除いた全物質中で最大である。したがって人間のみに限らないが、体温調節で体温を下げる時は、発汗作用などに伴うこの水の特性によっている。例えば水の蒸発潜熱は０.５８５kcal／gだから、体重７０kgの人の体温を１℃下げることになる。

　さてこの人間の比熱０．８３という数は、メキシコのテオティワカン遺跡や英国ソールズベリーの平原にあるストーンヘンジに見られる基本単位８３cmと、メートル法の１ｍとの比率８３：１００≒５：６を連想させる。また水の蒸発潜熱である０.５８５kcal／g、つまり５８５cal／g数値は金星の会合周期５８４日や水星の自転周期５８．５日を連想させる。この数値的連想が全くの無意味なのか、それとも何らかの数的呼応を異なる階層・異なる領域に見ようとする発想からなのかを、人間の１０進法的発想と人間の平均体温として現われた数値と地球の１年の日数３６５日との間の関係に見ていくことにしよう。

（※）比熱とは１グラムの物質を１Ｋあげるのに必要な熱量のことである。水１グラムの温度を１Ｋ（正確には１気圧下で１４．５℃から１５．５℃）あげるのに必要な熱量が１カロリーである。したがって熱量単位をカロリーとすると、水の比熱は１である。水の比熱が大きいことが、海洋に近い地域の気候を温和にしている。以下は種々の気体・液体・個体の定圧比熱である。単位はカロリー／グラム・度。