B009

■１■天空の月と太陽は19年ごとに全く同じ配置になる。19太陽年が235 朔望
周期とほぼぴったり等しいということだ。つまり太陽暦の同じ日に月の相が同
じになる。この周期は紀元前５世紀のギリシアの数学者にちなんでメトン周期
と呼ばれている。中国では19年を章と呼ぶために、この周期を章法と呼んだ。

■２■19太陽年は(365.24219日×19＝)6939.60161日であり、一方235朔望月は
(29.530589日×235＝)6939.68842日だからこの２者は殆ど等しい(99.999％)。
誤差は19年で約2.08時間(＝0.08681日)である。235＝12×19＋７だから、12朔
望月(＝１太陰暦)の19年間に、閏月を７回配置すればよいという計算である。

■３■メトン周期は太陽の周期と月の周期を、閏月を挿入することで整合させ
ようとする太陰太陽暦の要請から見出されたものだが、19年の間にわずか0.09
日ほどのずれは残されたままだった。この微細な端数差も 219太陽年が経過す
ると約１日ずれてくる。このため時々改暦してずれを修正する必要があった。

■４■カリポスは１太陽年を365.25日として計算した。すると19年×４の76年
で27759日となり、４メトン周期より１日少なくなる。これを235朔望月×４の
940朔望月の27759日と一致させたのだ。76年間に28回(＝940－76×12）の閏月
を入れることになる。中国では四分暦に採用され、76年を１蔀と呼んでいる。

■５■喜寿の誕生日に月を見ると生まれた時と同じ月が見えるという表現があ
る。喜寿は数えで77歳、満では76年である。「喜」の字は草書体だと十七の上
に七が付いたような形なので、77歳を喜寿と呼ぶようになったらしい。これは
76太陽年＝940朔望月＝27759日のカリポス周期と同じことを言っているのだ。

■６■ヒッパルコスはこのカリポス周期をさらに４倍して１日引き、 304年＝
3760月＝111035 日とした。304＝76×４＝19×４×４であり、3760＝940×4＝
235×４×４でもあるということだ。ヒッパルコスは現代につながる46星座を
決定し、また天動説を含む古代の天文学の体系を成立させたと言われている。