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■１■満月の日の夕刻に、西に沈み行く太陽を眺めることがあったら、そのま
ま振り返って東の空を見てみれば、昇り始めの満月を目にすることができるだ
ろう。もしくは早朝に西に沈み行く満月を眺めつつ、東の空から昇り来る太陽
を見ることもできる。同じ空に太陽と満月を同時に眺められる絶好機である。

■２■偶然それを体験した人もいるだろう。天文学的には自然の出来事だ。し
かし実際に太陽と太陰が１つの天空に在る大地に立つということは、天のシン
クロニシティに自らの心身を静かに重ね見るということでもある。肉眼でそれ
を同時に見ることができないと言う事実は、単なる知識を超えて腑に落ちる。

■３■月の自転周期は27.3日だが、満月から次の満月までの間に地球自身も太
陽を公転しているので、月の朔望周期は29.5日である。極付近と赤道付近で自
転速度の異なる太陽の平均自転速度は27.27日だ。同様に太陽が1回自転しても
地球は先に進んでいるから、地球から見ると太陽の自転は29.5日程に見える。

■４■天文学的には月と地球と太陽は衛星と惑星と恒星の関係だ。しかしそれ
を超えて、地球からは時間の周期的にも、空間の見た目の大きさも、共に重な
るようにほぼ等しい。それは唯一地球からの視座だからである。私たちが太陽
と太陰を１つの空に見るということは、見る者が地球と重なることでもある。