それにしてもそもそも正４面体は何だろう。「自然界は無駄をしない」という表現があるが、正４面体は最小の素材、つまり４の点・４つの面・６本の線で、３次元空間を内と外の２つに区分する単位ユニットだ。この内側の閉鎖空間を専門用語で「胞」という。実はこの内と外という概念をひっくり返す「反転」という考え方もまた、この本を貫いている１つのテーマである。２０世紀の天才幾何学者、バックミンスター・フラーは「正４面体が宇宙を構成する基本要素である」と主張した。また正４面体は思考・概念と３次元的リアリティをつなぐイデアであり、全宇宙の情報をそこから取り出すこともできると言われるほどの最強アイテムでもある。宇宙は正４面体で始まり、正４面体で終わる。

　幾何学的に言えば、正４面体は５つあるプラトン立体（正多面体）の内の１つで、内接球・中接球・外接球の３接球を持ち、また７本の回転対称軸を持っている。５つのプラトン立体において、正６面体と正８面体、正１２面体と正２０面体という互いに双対な立体があるが、正４面体だけは自分自身と双対の関係である。（プラトン立体については次の章で詳しく見ることになる。）さて「内接球・中接球・外接球の３接球」だの「回転対称軸」だの「面点変換できる双対の関係」だのと、難しい言葉が続出したが、これらについて今は特に気に留める必要はない。おいおいその概念を共に見ていくことになるだろう。