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『Enlightened i .com Ancient Hidden Knoeledge 』より。

■１■ところで水星はなぜ「水星」と呼ばれるのだろう。古代中国では水星は
太陽から離れないその方位から辰星という名前だ呼ばれていた。方位は北で五
行説では水に対比されていた。辰星という名は中国から日本に入ってきたが、
あまり使われていない。日本人は水星にほとんど注目していなかったようだ。

■２■一方の金星は、古代中国ではやはり五行思想と関わり「太白」と呼ばれ
ていた。こちらは日本でも古くから知られており、神格化した神ともされてい
た。平安時代には宵の明星を「夕星」(ゆうづつ)と呼んでいた。清少納言の随
筆「枕草子」にも、夜を彩る美しい星の１つとして、その名が記されている。

■３■水星は英語ではmercuryだが、原子番号80:水銀の意味もある。これはロ
ーマ神話の中のMercurisからきていて、ギリシア神話のHermesと同一視されて
いる。水曜日はフランス語だとmrecrediであり、イタリア語だとmercolediと
なる。隠れた知の伝授者という系譜では、智慧の神トートとも同一視される。

■４■ヘルメスはギリシア神話のオリンポス12神の１人でゼウスの末子だ。誕
生の日にすでにカメの甲羅から竪琴を発明したという。笛なども含めた音楽、
文字、数学、天文、体育、オリーブ栽培、度量衡などを生み出した。富と幸運
の与え手であり、天地の間を往来する使者、案内神で、旅行者の神でもある。

『Look In Not Out』より。

■５■ヘルメスの姿は普通若々しい青年に描かれ、常に旅支度をしている。つ
まりつばびろの帽子(ペタソス)、伝令の杖(ケリケイオン)、靴(サンダル)で、
後にそれぞれに翼が付く。また杖には冥界の動物である蛇が二重に巻き付いて
いる。ヘルメスは元来アルカディアの地の先住民の魔術的な神だったらしい。

■６■主に３世紀にエジプトで書かれたヘルメス文書その他をヘルメティカと
呼ぶ。それはヘルメス・トリスメギストスの教えとして説かれ、プラトン的、
ピュタゴラス的哲学思想にストア哲学等が混在する。覚知(グノーシス)により
神人合一が得られるが、その啓示者は神的精神(ヌース)であると教えている。

■７■一方金星は英語ではvenusだが、メソポタミアでは美の女神イシュタル
（イナンナ)と呼ばれ、ローマ名ではウェヌスで愛と美と豊饒の女神の名前か
らきている。この女神はギリシア神話の輝く美と愛の女神アフロディテと同一
視されて、民族の枠を超え女性の原理として金星と共に広く知れ渡っている。

■８■プラトンの「饗宴」によれば、この女神は一方では天空の神ウラヌスか
ら母なくして生まれた天上のアフロディテであり、一方ではゼウスとディオネ
の契りより生まれた地上のアフロディテでもあるという相反する特性を持つ。
官能的快楽の具現者であり、同時に精神的で至高の美の体現者でもあるのだ。

（アテネ出土；２世紀；大理石）　『粘土と花（エキサイト）』より。

■９■すなわち愛と豊饒の女神なのである。このオリンポス12神の１人である
アフロディテは、後にやはり12神の１人であるヘルメスと交わって、男女両性
を持つヘルマフロディテを生んだとも言われる。この両性具有の完全なるヘル
マフロディテは、水星と金星という内惑星に当てられた２神の合成名である。

■10■私は占星術に重きを置く者でも無視する者でもないが「星は指示する、
しかし強制はしない」という中世占星術師の箴言にあるように、決定論と自由
意志のバランスが重要なのだろう。この２星の上に地球の精神と生命を形成し
ていく円周率πと黄金比φ、５芒星と６芒星、10進法と12進法などを見よう。

　