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正面から見た鳥羽シーサイドホテル。鳥羽駅からは対岸の中央の丘に建つ。

■青春18切符がまだ残っているので、鳥羽まで行って温泉につかり、さらにはば美味しい魚介類でもと思いたち、名古屋からＪＲ快速「みえ」に飛び乗った。ゆったりシートのこの列車は特急並みに駅をスキップして鳥羽まで直通運転しているのだ。途中第３セクター路線を走るので片道490円が必要になるが、それでも18切符が使える。

■ディーゼル駆動車は単線の平地を快速に飛ばす。乗客は少なく立っている人もいない。鳥羽駅に到着するとさっそく観光案内所へ向かう。食事ができて温泉につかれるようなところはありますか？と直球の質問をすると、即座に案内所のすぐ前に停まっている観光バスを指し示された。それは鳥羽シーサイドホテルの送迎バスだった。

　　
　　　　　　　　「風見の湯」の檜風呂。右奥にさらに壷湯と露天岩風呂がある。

■送迎先でランチバイキングを取れば温泉も半額で入れると教えてくれた。それに一発決定してバスに飛び乗った。やがて出発したバスは安楽島大橋を渡り、10分ほどで対岸の安楽島の高台に建つ鳥羽シーサイドホテル入り口に到着した。そこはフロントのあるホテルの７階フロアーだったのだが、建物が大きすぎて右も左も分からない。

　　
　　　　　　　　「風見の湯」の大浴場。外は鳥羽湾、内には他にサウナもある。

■そこで同乗して来たおばあちゃん３人組についていくことにした。彼女達の後姿は食事＆温泉コースのリピーターらしい慣れた足取りで、６階のレストランに導いてくれた。しかしランチ「デザート」バイキングメニューは食べたかった魚介類ではなかったのでちょいがっかり。デザートに特化したケーキ食べ放題のバイキングだった。

■仕方なく温泉の方に頭をシフトした。ここのお風呂は３箇所が外来入浴者にも開放されていた。望館６階にある「風見の湯」、汀館３階にある「汀の湯」、岬亭１階にある「岬の湯」だ。どれも清潔で新しかったが、「風見の湯」は檜作りの湯、鋳物の壷湯、屋根はあるが石造りの露天、そして広めの内湯とバラエティに富んでいる。

　　
　　　　　　　　「風見の湯」の外の露天岩風呂。独占なので文句はない。

■島の多い海を見下ろす展望が素晴らしい。「汀(みぎわ)の湯」は内湯だけだがジャグジーとジェットバスもあり、こちらも大きく取られたガラス張りの窓からは、広々と鳥羽湾を眺めることができる。湯上りには無料の電動肩揉み機や足揉み機でさらに緩む。時間的にチェックアウトとインの狭間なので客がおらずまたもや独占状態だ。

　　
　　　　　　　　　「汀の湯」の大浴場。休憩所にはマッサージ機がある。

■雨粒のぱらついていた空も晴れ上がり、波も穏やかだ。ここの温泉は地下1800メートルまで掘削して、かなり強引に汲み上げている弱アルカリ性単純泉なので、泉質や掛け流しを要求するつもりはない。むしろ全面のガラス窓からパノラマのように見下ろす鳥羽湾を眺めつつ入浴するというシチュエーションだけで充分楽しめるものだ。

■ホテルの中には入浴後の休息空間が随所にゆったり取ってあり、宿泊客でなくても利用できる。下手な温泉旅館で食事付き日帰り入浴などと言って十数畳ほどの部屋を数時間貸し切るより、よほどゆったり気分でリラックスできる。もちろんこれには窓の外の光一杯の鳥羽湾の景色と、広くデザインされた空間に追うところ大なのだが。

　　
　　　　　　　「汀の湯」の大浴場。他にバイブラとジャグジーがあるが全て内風呂。

■３棟のうちで一番海に近い岬亭の「岬の湯」は、広い内湯のほかに瓦屋根付きの塀で囲まれた露天風呂がある。１階なのでこちらが裸でなければ手を振りたいくらいの距離を、漁船や遊覧船が通り過ぎて行く。幸運なことにここもまた他の客がおらず、独占である。デザインが隅々まだ気が利いていて、アラが目立つようなことがない。

　　
　　　　３か所の湯場の移動の間にも休憩するスペースがあり、それぞれの眺めも素晴らしい。

■今度このホテルもぜひ泊まってみたいものだ。４時頃になると館内には新たにチェックインした宿泊客が浴衣に着替えて風呂等に向かう姿が目立つようになってきたので、帰り支度を始めることにした。泉質や湯量にのみ固執するのでなければ、このように自然に囲まれた巨大宿泊施設も、トータルな評価から見てみればアリだだろう。

■鳥羽シーサイドホテルの収容可能人数は1152人と、他の宿泊施設と比べてもダントツだ。ホテル発駅行きの送迎バスがちょうど出発したばかりだったので、鳥羽駅から車で10分ほどだった距離を駅まで歩いてみることにした。しかしこれは無謀な選択だった。残暑の残る日差しの中を小１時間もてくてくと歩くはめになってしまった。

　　
　　　　　　　「岬の湯」の露天風呂。内風呂はゆったりした大浴場。すべて独占。

■せめて夕食は鳥羽の魚介類をと考えてお店を探すが、夕刻にはもう閉店している店が多かった。さらに１時間に１本の快速「みえ」の発車時刻も迫っていたので、食欲の方は後日またと胃袋に言い聞かせて列車に乗った。それでも鳥羽が心の中ではぐっと近く思えるようになったので、再訪を期しつつ岐路に着く。湯巡りは楽しかった。

　　
　　　　　　　　「岬の湯」の露天風呂。左の塀の外はもう船が行き交う海。

■教訓。美味しい魚介類を食べたかっら早朝出発のこと。それにしても歩いてかいた汗を過度に冷やしつづけてくれた車内の冷房はシャレにならない寒さだった。鳥羽シーサイドホテルの湯は敷地内から1800メートル掘削したところから湧出した約１億年前の深層型天然温泉と謳っている。pHは8.0。湧出がずっと続けばいいのだが。(※)

★所在地：三重県鳥羽市安楽島町1084TEL. 0599-25-5151 http://www.tobaseasidehotel.co.jp/

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(※)ＨＰを見ると現在は榊原温泉の七栗の湯２号を使用しているとのこと。掘削と配管工事中の為とのことだが､公式ＨＰにお知らせがないままの使用らしい。源泉が枯渇したか、極端に湯量が減ったのではなかろうかと推測される｡加水･加温･循環濾過･消毒は以前よりあるが、普通のスーパー銭湯みたいな感じという評もある。まあロケーションのみでも割り切ればそれなりに価値はあると思うが。

人生丸ごと湯治日記（５７０）　20040901 re.