（541）燕温泉「河原の湯」

■午前９時半過ぎにＪＲ長岡駅を降り、長岡造形大学の菅原先生の研究室に結集する。今日のにわか温泉探訪隊は菅原先生、甲田博士、遠藤さんと私の総員４名だ。今日もドライバーを務めて下さる菅原先生の車は、今朝私が電車で来た道のりを逆に辿り、妙高山への急勾配の道をぐんぐん登り続けて、宿数７〜８軒の燕温泉に到着した。

　　　　　　　

■この妙高で最高所にある温泉宿で立ち寄り入浴させてもらうのかと思いきや、菅原先生はさらに紅葉に染まった山の上方を指差した。目指すターゲットはここにある２つの無料の露天風呂だという。温泉街を抜けたところに、右に行けば徒歩12分で河原の湯、左に行けば徒歩３分で黄金の湯という道標がある。まずは右手の道を進む。

■山道の右手側は深い谷川が遥か眼下に流れ、その向こう側の山は随所に滝が流れ落ちている絶壁だ。その上の方には紅葉の木々が青空を背景にくっきりと色づいていた。空気遠近法の中の風景は、まるで絵葉書のように美しい。温泉に入る前からもう気分が高揚してくる。さすが温泉達人である菅原先生の心憎い温泉チョイスと演出だ。

　　

■ピクニック気分で進んでいくと妙仙橋という吊り橋があり、それを渡ってから沢に下りて渓流沿いに細い道をしばらく進む。すると硫化水素臭がしてくる漂い始めて来た。すれ違えないほどの細い登り道を岩肌を抱くようにして回り切ると、白緑色に濁った10畳ほどの広さの湯だまりがあった。男女に分かれた簡単な着替え小屋もある。

　　

■湯船には中年男性と１組のカップルが浸かっている。ここが天然露天で混浴かつ無料という私の理想系であるのみならず、秘湯の要素もある燕温泉「河原の湯」だった。この湯は斜面上方の岩肌から湧出しているらしく、背の高い草の合間から時々湯気が立ち昇っている。辺りは紅葉ですぐ横には渓流という絶好のロケーションである。

■湯船の岩にこびりついている苔のような緑色の温泉藻が、湯船の岩に喫水線のように線を描いている。そこがいつもの湯量だとすれば、今日は普段よりかなり少ないようだ。温泉藻とは50〜80 ℃の環境に適応した極限環境微生物で、基本的に単細胞生物だ。原核生物である藍藻はクロロフィル aを持ち、繁殖場所は青緑色を呈する。

　　

■湯温が季節柄か少しぬるめなので、じっくり40分以上つかりっぱなしで寛いだ。遠藤さんは持参の水着を着用して入ったのだが、上がり際に注意書きを良く見ると水着着用・タオルを浸けること共に禁止と書いてあった。しかし後の祭り。最後まで知らないふりをすることに。ごめんなさい、管理してくれている方々と訪れるみなさん。

★所在地：新潟県妙高市大字関山。

人生丸ごと湯治日記（５４１）　20021011 re.