＜帰路…迷妄のトンネルを抜けるのはいつの日か＞

　ＪＲ越後湯沢駅まで送ってもらい、お礼も充分にしないまま新幹線に乗って東京に向かう切符を買いにみどりの窓口に走る。飛び込みで最も早いＭＡＸあさひのチケットを求めると、最後の１枚ですと言われて乗車券を手渡された。自らのラッキーと能天気を改めて確信しつつホームに進むと、若者からお年寄りまでが三々五々待合室に集まっていた。この温泉とスキーの町もすでに関東圏からは日帰りの範囲内なのだと改めて思う。滑り込んできたＭＡＸあさひに乗り込んで、席に座ったらゆっくりと眠気が襲ってきた。

　それにしても長い１日だった。そして濃い４日間だった。新潟は思っていたよりは温かかった。そして思っていたよりも上下に長かった。ノートパソコンと常時接続のカードを持って旅をすれば、今ではどこでもＰＣとインターネットを介してコミュニケーションが取れる。今日も温泉の休憩所や駅のホームなどでノートＰＣを開けて、メールを読み多くの返事も出した。しかしひとたび電波の届かない山奥や長いトンネルの中では、その連絡ラインも途絶えるということも改めて知った。

　そして今、上越新幹線の長いトンネルの中で私は考える。私はこのトンネルを抜けてどこに向かっているのだろう。過去でなく未来であることは確実なのだけれど、その未来とはどの方向でどのようなものなのだろう。それは全く確定していないし、誰にも教えてもらえるものではない。人々の善意や慈愛に支えられにがらも、自らの智慧と勇気で切り開いていくものだ。今回新潟で出会った人たちとも、今後も良き未来を共有していきたいものである。

　いつもいつも私は道に迷い続けている。しかし常に新しい道を探し続けているからでもあるはずだ。そう考えていたら列車はトンネルを抜けた。トンネルのこちらはすでに雪国ではない。ただ夜の闇にたっぷり包まれて暗かった。しかし空を見上げると、そこには満月がくっきりと輝いていた。月を眺めながら、私は心地よい眠りに落ちていった。

画像解説／上右：越後湯沢の駅前にある看板にも別れを告げる。いよいよ新潟県を去る時がきた。
　　　　　中左：１月２８日の満月。物事の節目にはいつもそこに満月がいてくれる。

とらまろじゃぱん音線記５−１９（２００２０１２８−５）

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■この章完結■