東京原宿でプロジェクトメタトロン・レクチャー＆プレイをやった時、仙台から芳賀さん夫婦が参加してくれたことがあった。その時今度仙台でもすぴこんをやるのでよかったら来て下さいと言ってくれたので、その時講師に招いていたるしえる氏および甲田氏も一緒に10月の11日の仙台すぴこんに合わせて宮城に行くことにした。３人はかつて「れっつとらしえ」と称して旅をしながらレクチャーなどをしていたことがあるので、また３人で参加して鼎談でもしようということになった。

------------------------------------------------------

　＜台風に煽られ続けて星の郷へ＞

　ここ１０年で最も勢力が強い台風２２号が和歌山沖まで接近しているというので、新幹線が止まる前に早々に家を出て名古屋駅に向かっ３連休の初日というのに台風の影響で、ＪＲは本日の旅行はできるだけお止め下さいとアナウンスするほど逃げ腰だ。自由席券を買ってとにかく新幹線ホームに上がると、すでに名古屋駅の時点で２５分の遅れが出ているのぞみがちょうど入線してきた。窓越しに空席があることを確認してからその列車に飛び乗った。アクシデントのおかげで迷惑をこうむる人もいれば、その恩恵を受ける人もいる。私は何の証拠も論拠も持たぬまま、自身の幸運との交差能力をこれからもずっと信じ続けていくことだろう。

　台風の進路が名古屋−東京−仙台と私の進行方向と重なっているので、背っ突かれるような格好のままのぞみは進み、結局５５分遅れで東京駅に到着した。そして山手線で上野に辿り着いてみれば、午後２時以降の上野発常磐線の特急は全て運休を決定しており、普通列車もまたかなりの本数を間引き運行していた。そこで急遽甲田氏との待ち合わせ時間を繰り上げ、追いかけてくる台風を振り払うようにいわき行き常磐線に乗って石岡に向かった。

　駅まで迎えに来てくれたるしえる氏と会い、彼の愛車に乗る頃にはついに台風の先走りが追いついてきた。そんな折りも折り、大学時代の友人から携帯電話に連絡があり、豪雨を背景音に共通の友人が突然の失踪した事件を伝えてきた（※１）。田畑や車道を見る見るうちに水浸しにしてゆく豪雨の舌先に絡め取られながら、かろうじて「れっつとらしえ」出立の地「星の郷」（※２）に辿り着いた。久しぶりに星の郷のいつもの和室に落ち着いて、さっそくノートパソコンを開こうとするとウィンドウズが立ち上がらない。原因を調べても自己修復させるすべもないまま、それは１キロ余りの金属の箱と化してしまった。つい先日バックアップを取っておかなかった外付けハードディスクが勝手に他界したばかりなので、今回の旅が終わったらこのパソコンだけはちゃんとバックアップを取ろうと考えていた矢先の出来事だ。不測の事件は今後も突発生起するだろう。未知に対してさらに気を引き締めるべし。ああ、それにしても流れ出たミルクは元には戻りはしない。

　ＴＶをつけると豪雨による異常な降水量が東京の低海抜地帯で道路を川と化したりマンホールを吹き上げたりしている。横浜ではダウンバースト現象でトラックが何台もごしゃごしゃと折り重ねられてしまったりと、各地で随分な被害や影響が出ているらしい。この台風から進行方向に逃げてきたけれど、今夜半もに私たちを追い越して仙台方面に先行するのだろう。



　今回招いていただいた芳賀さんの指摘で分かったことだが、遥かに遠いと思い込んでいた仙台は、東京から見れば名古屋とほぼ等距離にあるのだ。確かに新幹線に乗ればほぼ同じ時間で到達してしまう。ＪＲ東日本などがさんざんせんでんしているけれど、東北はイメージ的にはまだ近くはないのである。確かに前世紀までは、関東まで広まった様々な理論や活動も東北の壁に阻まれてなかなか北進流布できず、むしろそこをスキップして一気に北海道に飛んで広まると言われるような現実が確かにあった。マイナーなところではヌース理論然り、れっつとらしえ然りである（←ここは笑うなり）。

　しかし２１世紀となった今や、プロのサッカーチームがありプロ野球誘致でも賑やかな仙台などは、それまでの地方的とも言える独自な文化充足都市から、全国・全世界への文化・情報発信都市へとさらに変容し得るのではないだろうか。東北からは詩人が多く輩出されているとるしえる氏は言う。その詩人の１人である河村悟氏などは、昔から搾取され続けてきた土地・東北は、豪雪の除去に多額のお金が消えていくために現在でも何かと経済的に立ち遅れざるを得ないと分析し、東北の年をみな地下都市にすれば除雪費用も要らずに裕福になるなどという説を主張していたりする。詩人の世界観はまあ置いておくとして、とにもかくにも自らの目と肌で杜の都を感じてくることにしよう。

【画像キャプション】
上左：星の郷のクラブハウスで紅茶をいれてくれるるしえる氏。最近は宇都宮在住時が多いらしい。
上右：同じくクラブハウスにたたずむ甲田氏。居住まいはバックパックと常に一体化しているのか？
下左：るしえる氏の愛車赤い流星号。旅する占星術師の足でありカバンでありかつ瞑想室でもある。
下中：星の郷の広間の明るい窓辺。眼下に田畑が広がり、山並みの向こうには筑波山も姿を見せる。
下右：星の郷の意匠豊かなクラブハウスには様々な芸術作品が山ほども詰まっている贅沢な空間だ。

れっつとらしえ北上記７−０１（２００４１００９）

------------------------------------------------------