黄金よりうたたねを取るだろう　　19820618

神は夢見ない
クローバーの花の中で小首を傾げる少女を見た
６月の光
風もない

神は成長しない
夢見るショベルカーの蠕動運動は止まない
午後の陽だまり
眠り猫

二度寝の夢は絹の肌
滴り落ちる蜜の中
一万曲が耳元で鳴る朝
そして本当の屋根が飛ぶ

　　難破船　　　19820628

思い違いに魅せられて
独り善がりに抱かれて
自分の夢にまぐわって
嘆きの涙を産み落とす
恋する女のえせ難破船

　　街頭の走り書き　　　19820701

侮蔑は増殖する原生動物
誰の注意も引けぬ売り子の歌うような声

木漏れ日に輝く白いシャツが
風ににじんでハレーションする窓辺

さて美しからん女の声に潜む自信は
肌を鳥毛立たせる毒中ノイズだ

　　日曜日　　　19760322

喫茶店の中には優しい無関心があり
春日の黄昏は残酷な匂いが漂っていた
窓の外の弱日の中でこの手をすすごう
遊び疲れてしまったのだ
まだ遊び足りないというのに

うつろな日曜日
ぼくはうつむいてどんどん歩いた

少女らの純潔が漂う駅前のバスターミナル
風にあおられて行き来する新聞紙
人と車が踏みにじり引き裂いて運び去る
無為は罪だ…少なくともこのぼくにはね

さかまく日曜日
ぼくはたちくらみこらえて歩いた