《１》月と地球と10進法

　夜のＪＲ新宿駅西口。私は数の累乗の和について考えていた。０〜９までの10進法の中でも、０〜４までをその中のさらに特別な数として見る事ができる。ＢＯＢのＮＯＯＳ理論の中に、世界を５という数のフラクタルで見る『ペンターブシステム』という世界観がある。それにも通じるところがあるのだが、私はマヤの20進法及びその表記法としての５進法を念頭に、10進法を５進法と20進法に上下半転させて、数そのものの中に見れないものかと考えていた。

10÷２＝５
10÷５＝２
10×５＝50
10×２＝20

　10＝２×５。つまりこれはとてもシンプルだが、２と５の10を介する乗除対称性を、10進法における桁のずれの上に見る事もできるという事だ。それでは特別な数１〜４の累乗の和を見て見よう。

（１）１^１＋２^１＋３^１＋４^１＝10
（２）１^２＋２^２＋３^２＋４^２＝30
（３）１^３＋２^３＋３^３＋４^３＝100
（４）１^４＋２^４＋３^４＋４^４＝354 (29.5×12＝354)
（５）１^５＋２^５＋３^５＋４^５＝1300

　１〜４までの和は４の３角数、つまりボーリングのピンの本数10となる(１)が、２乗数の和はこの３倍の30となる(２)。そして３乗数の和は10倍の100となる(３)。また４乗数の和は354となるのだが、この数は月の12朔望周期日、つまり月の満月から満月までの周期29.5日の12倍であり、太陰暦の１年の日数に相当する数だ（４）。それから５乗数の和は1300で、神聖暦ツォルキン260(＝13×20)の５倍である（５）。

　駅前地下１階のロータリーを左に回りながらホームレスの人達のそばを通ったのだが、その中に傘をさして顔を隠すようにして眠っている中年女性がいた。以前にも何度か夜遅くに通った時に見かけた事があるから、ここがいつも彼女の眠る場所なのだろう。いかなる過去にのしかかられているのか、まるでひしゃげたように眠っている。
　目をそらさずに、私は歩きながらその寝姿の前を通った。目の前で死に行く猫を見取った時のように成すすべのない自分を感じた。この目の前の光景は私に何を思い出させようとしているのだろう。私は何を学ぶべきなのだろう。誰に言うでもなく小声で「頑張れ」とつぶやくと、私は歩を進めながら、また数について考える事に戻ろうとした。胸の辺りにつかえ始めていた情動的なエネルギーを押さえ込もうと努めると、内から感情の波が静かに引いていくのを感じた。

　いつもの如く電卓と筆記用具で歩きながらメモや計算をしているうちに、私は365や273に近い数が出てくるのに気がついた。そして人間の10進法の発想もしくは精神構造と、地球の公転周期や月の自転・公転周期とは非常に深いかかわりがあるのではないだろうかと考え始めていた。しかしそのような表面的な意識とは別に、私は心の奥底では、まだ先程のホームレスに対する気持ちがうごめいているのも感じていた。

（６）１×２×３×４×５×６×７×８×９＝362880＝362.88×10^３
（７）１÷２÷３÷４÷５÷６÷７÷８÷９＝1/362880＝0.0000027557319…＝27.557×10^−７

　（６）は単純に１〜９を掛けていったもので、数学的には９の階乗といって<９！>と表現できる。また（７）は単にその逆数だから<１／９！>だ。さて、10進法の１〜９の数すべての積が地球の１年３６５日の日数(の千倍)に非常に近い事、またその逆数が月の自転・公転周期27.32にこれまた非常に近いのは単なる偶然なのだろうか？
　ついでだから月の地球に対する公転周期及び地球の太陽に対する公転周期の値を、地球の１日を基本単位として表した27.32及び365.2422という数値の近似値で表現すれば、冬の福岡で確認したように次のようになる。

<月の公転周期>27.4×<地球の公転周期>365＝10001 もしくは
10000＝27.32×366.0322108…
10000＝27.37909256…×365.2422

　この10進法の１万という数は、それぞれ10の０、１、２、３、４乗の５桁として表記できる。計算には有効桁数というものがあるので、概算で考えてみれば、これはかなり無視できない事実ではないだろうか。
　これは公転周期という時間的な数値からの事実だが、それだけではなく、実際に月と地球の赤道直径の比率という空間的数値を見ても次の通りだ。

　 <月の赤道直径>3,276km：<地球の赤道直径>12,756km
＝<月の赤道直径比>100：<地球の赤道直径比>366.9735
＝<月の赤道直径比>27.2499：<地球の赤道直径比>100

　つまり互いを100とすれば、直接関係のなさそうな直径の比率の上にも、それぞれの公転周期に近い数字が出てくる。これもまた単なる偶然なのだろうか？偶然などという事が、数値の上で本当にありうるのだろうか？数の上で同じもしくは近似した数同士には、何か必ず深いところでつながる意味があるに違いない。ちなみに365.2422の逆数は0.002737909…であり、27.32の逆数は0.036603211…である。（逆数を取るとは､一意で反転させるという意味もある。）

365.2422の逆数　１／365.2422＝0.002737909…≒27.38×10^−４
　　 　　27.32の逆数　１／27.32＝0.036603211…≒366×10^−４

　12(水晶)の月15日／ＫＩＮ５１　青い水晶の猿／Ｇ暦６月13日　or 19950613