《３》上諏訪の千人風呂

　今日は一部では有名な「ローマ教皇ヨハンネス23世の予言」では、諸天体から救い主たちが現れて地球をオアシスに改善する事を始める日だという。ドリームスペルではKIN43「青い自己存在の夜」、ＮａＮａちゃんの銀河の誕生日だ。そのＮａＮａちゃんと私を乗せて、とらおさんの運転する車は東京に向けて中央高速を走っている。私は京都の他の友人に会うどころか、連絡する暇すらもなかったが、東京ではまた東京なりの忙しさが待っているのだろう。

　とらおさんが突然「諏訪で温泉つかってくか」と言った。「いーっすねー」と私。「うん、いくいく」とＮａＮａちゃん。私たちはいったん高速を降りて諏訪湖沿いに走り、ドイツ風レンガ造りの建物のそばに車を止めた。そこが片倉財閥が昔、女工の厚生施設として建てた「片倉館」という共同浴場だった。大理石でできている大浴場の湯の底には玉砂利が敷かれていて、「千人風呂」と呼ばれている。
　水面を湯気が筋を成して走るのが印象的なその湯につかりながら、プールサイドのように広い床面タイルの幾何学的パターンを見ていると、私は去年の夏広尾で５つのプラトン立体をサイコロに見立てて考えた事を思い出した。

　それぞれの立体の各面に数をふった、５つのプラトン立体サイコロ全ての目の数の和は３５５になる。このうち正６面体と正８面体、及び正12面体と正20面体はそれぞれ面と点が変換できる関係にある双対立体である。同様に正４面体は自分自身と双対なので、もう一つの正４面体を想定すると、これら６つのサイコロの目の総和は３６５になる。

正４面体 １+２+３+４＝10
正４面体 １+２+３+４＝10
正６面体 １+２+３+４+５+６＝21
正８面体 １+２+３+４+５+６+７+８＝36
正12面体 １+２+３+４+５+６+７+８+９+10+11+12＝78
正20面体 １+２+３+４+５+６+７+８+９+10+11+12+13+14+15+16+17+18+19+20＝210

（10＋10＋21＋36＋78＋210＝365）

　正６面体と正８面体は双対立体だといったが、この２つを５回面点変換した時のそれぞれの体積比率を見ると(Ａ)のようになる。このように連続して面点変換をした同形立体だけの体積比率を見ていくと、１対27対729＝３^０：３^３：３^６となる。 例えば正６面体の体積で見ると(Ｂ)のようになる。この<ａ>と<ｃ>が重心で重なっていると考えるとその体積は730となり、その半分の値は地球の１年の日数365になる。また<ｂ>と<ｃ>を同様に考えると体積は756となり、その半分の値は土星の会合周期378になる。なお<ａ>と<ｂ>では28で、13の月のひと月の日数に相当する。

（Ａ）　正８面体−正６面体−正８面体−正６面体−正８面体−正６面体
　　　　 １　　　 ： 　　６　　　 ： 　２７ 　　： 　１６２ 　：　７２９　　 ：　４３７４
　　　　　　　　　　　 １ 　　 　：　 ４．５ 　： 　　２７　 ：　１２１．５　： 　７２９

(Ｂ） <ａ> １×１×１で体積１の正６面体
　　　<ｂ> ３×３×３で体積27の正６面体
　　　<ｃ> ９×９×９で体積729の正６面体

　この730の正６面体の体積を半分にして、地球の１年と同型対応するためには様々な方法が考えられるが、この正６面体（及び正８面体）の13本の回転対称軸を保持したまま体積を１／２にするには、この正６面体にぴったり収まる（つまり外接球を共有する）ケプラーの星形８面体を想定するのが優雅だろう。 また31本の回転対称軸を持ち、５重対称性を内包する正12面体及び正20面体の辺の数は共に30本だが、この30の３角数は465、すなわち100＋365である。

　ところで｢魔方陣｣はいろいろ面白い数を見せてくれるが、27×27の魔方陣の中心数及び９×９×９の立体魔方陣の中心数は共に365だ。これは27の２乗及び９の３乗が729であり、この２種類の魔方陣にはそれだけの数のユニットがあるという事だが、中心を介して対の位置にある２数の和(対和)は全て730である。中心のユニットだけは自身と対なので、その数は半分の365であるという事だ。

　風呂から上がり、近くのお店で蕎麦を食べると、もうすっかり満足してしまい、あとは一路福生へ向かって車を走らせるだけだった。いろいろと話をする中で、私は観念的過ぎるところがあると忠告されてしまった。確かに観念のための観念みたいな言動をするところがあるのは自覚している。アクティブ・ホームレスもまた、観念から始めた事ではなかったはずだ。
　私はいまや命懸けでアクティブ・ホームレスという人体実験をしているつもりだった。しかしそれは、結局いざとなったらすぐ中止できる、余裕ある者の痴れ事だったのだろうか？そしてそれは、日々の生活を一生懸命送っている人達に対してはもちろん、明日の保証もないホームレスの人達に対してもまた、失礼極まりない生き様なのだろうか？
　いやそのような事はない。自信の揺らぎははただ弱気からくるものだ。それを中途で消え入るように放り出すには、私はすでにあまりに多くの時間アクティブ・ホームレスをしてきてしまっていた。あまりに多くの人の助けを受け、迷惑をかけ、混乱を残してきていた。止める時は自ら納得して、止める事を宣言しなくてはならない。

　この今が最も興奮するおもしろい時代の結節・反転の時であり、人間の総体が地球そのものであり、地球が宇宙の中で最も美しく素晴らしいところであり、この肉体が実は最高の次元であり、男と女の真の結合が最高次元の統合であり、クォーク・原子・分子・人間・地球・太陽系・銀河がみな、次元の異なる同じものの別の現れであるという事などの個人的思考と理解。それを数や形や音や色や言葉で表現しようと試行錯誤する事。
　それが独力でしかも限られた時間の内にできるとは思わない。しかし私が考え感じる草々が、必ず人間の総体や宇宙とつながっており、それがたとえ途中で挫折したり力尽きたりしても、決して孤独な作業ではないという強い確信が今はある。

　さてでは忘れてしまう前に、１年365日の内部構造のいろいろな解釈をまとめておく事にしよう。

365日＝177＋177＋11＝177＋188
　　　　（177日は６朔望周期日。11日は365日と12朔望周期354日の差。） 　
365日＝179＋179＋７＝179＋184
　　　　（179日は秋分〜春分の日数、184日は春分〜秋分の日数。７日はその差。）　
365日＝182＋182＋１＝91＋91＋91＋91＋１
　　　　（１年を２分及び均等な４季節にしたもの。１日はどこにも属さない。） 　
365日＝（31＋30＋30）×４＋１
　　　　（エリザベス・ケアリスの世界暦。括弧の中は大･小･小の月で季節の内部構造。）　
365日＝73＋73＋73＋73＋73
　　　　（１年を５等分したもの。） 　
365日＝20×18＋５＝（19＋１）×（19−１）＋１
　　　　（マヤの農耕暦ＨＡＡＢ。ひと月20日が18カ月とどこにも属さない５日。） 　
365日＝28×13＋１＝（７×４）×13＋１
　　　　（ドリームスペル暦、ケルト暦。ひと月28日４週間が13カ月と曜日のない１日。）　
365日＝19の２乗＋４＝（27の２乗＋１）／２＝（９の３乗＋１）／２
　　　　（１年365日を幾何学的に平面、立体として見る扱い方。）

12(水晶)の月７日／ＫＩＮ４３　　 青い自己存在の夜／Ｇ暦６月５日　or 19950605