ＢＯＢのところには都合３泊お世話になった。その間に『ＮＯＳＳ−ＳＭＣ』という、ＢＯＢの３人の姪っ子たちが作った会社の本拠地にもお邪魔して、ごちそうになったりもした。そこでいよいよＣちゃんの友だちも近くに住んですんでいるという阿蘇に移動することにした。阿蘇の外輪山の内側にある久木野村という所には、自給自足している、はじめ＆かるびぃという美味しい飯事(ままごと)夫婦の住む野中ハウスがある。
　この若い夫婦は、ちょうど今から１年前の１月30日に現在の地に居を移し、蒔きっぱなし植えっぱなしに近いいわゆる自然農法で稲作を始めた。そしてなかなかうまく行かないので一度は挫折しかけたが、奇跡とも言える自然の配慮で秋には立派な収穫を得たのだった。
　その他にもこの２人は、友人を宿泊させては自分の畑でできたおいしい野菜を食べさせ、そして共に遊び楽しむという、すばらしき慈福業を営んでいたりもする。

　実は私はこの２人がこのような生活を始めたいきさつが大好きだ。そもそもはじめクンは年若くして年商一億円の外食産業の会社の雇われ社長さんだったのだが、以前から一緒だったかるびぃちゃんが、日増しに元気がなくなり、辛そうにになっていくのに気がついた。そしてその外食産業の食べ物が食品添加物をばんばん入れたもので、材料も農薬や化学肥料を大量に使ってあり、まずくて体にもよくない事実に思い当たった。
　そこで彼は「自分にも他の人にもよくない事をして経済的に潤っているより、ここはひとつ偽物の味はすべて投げうって田舎に引っ越そう。そして本当においしいものを自分の手で作って食べる生活をしよう」と決心し、そしてそれを実行したのだ。
　はじめクンは自ら公言はしないが、かるびぃちゃんのためにそうしたのであろうという事に、私はいたく感動した。お金には不自由しないシティボーイから、健康に畑焼けした田舎の人への転身は、おいそれとした決心では成し遂げられない。あれこれと頭だけで考えているのみで、結局都会の中で元気をなくし、干からび曲がっていく人が多い中で、私は彼らの潔く、しかも重くも暗くもないくっきりした生きざまを尊敬している。

　その2人が現在、ちょうど山を降りて福岡に出て来ていた。実際の生活の中で自然との拘わりあいにおけるユニークな観点と考え方を育んできたこの夫婦に、折しも福岡のある団体からぜひ講演をして欲しいという依頼があったのである。このはじめクンの講演に行ってみた。そして明日車で阿蘇に帰るという事を聞いた。
　私はこれ幸いと厚顔にもその帰りの車に便乗させてくれないかとお伺いを立てた。するとこの素敵な夫婦は何を水臭い事言っているのという感じで、即座にＯＫと言ってくれた。かくして我々は感謝しつつも喜び勇んで阿蘇入りするのだった。

７(共振)の月10日／ＫＩＮ１６６　　白い惑星の世界の橋渡し／Ｇ暦１月19日 　or 19950119