ＯＦＦの参加者は三々五々集まったらしく、10人を超えていた。それがみな一つの露店の後ろにたむろして、一人や二人のお客に対して、その石はああでもないこうでもないと言っている。需要と供給の関係が人数の上では逆転していて面白かった。布の上には様々な石が並んでいる。水晶球、オブシディアンの玉、スター入りのローズクォーツ球、ラピスラズリの亀、カボッションのムーンストーン、米粒より小さいダイヤの原石、定番のフローライト。ＯＦＦに参加した一人がＴＯＳＨＩさんに尋ねる。

「宝石や貴石のパワーって本当にあるんですかね？」
「あるよ。ワシ見えるもん」
「え、本当ですか。オーラとか？」
「黒をバックに目の焦点をずらすと、モヤモヤしたものが立ちのぼっているのが見えるはずだけど。」

　そういえばＢＯＢの嫁さんになったきうかかさんもそんな事を言っていた事があるのを思い出した｡シエラさんもその話に加わる｡

「タキオンビーズとかもそうだけど、気に入った石に手をかざすと螺旋状に何か吹き上がって来るのを感じるよね。温かさとか、微風のような感じ。」 　
「本当はただの石なのかも知れないけれど、人間の精神ってそういうものに神秘的なパワーとか魂とかが宿っていると感じるような構造になっているんだろうね。」と私。 　
「そんな感性があれば石とだって精霊とだって話ができるんじゃない。」

　シエラさんは明るい巫女さんタイプの女性だね、とＴＯＳＨＩさんが冗談で言ったら、家系的には実際に巫女系の人だそうだ。以来彼女は「歌って踊れて占いもできる巫女さん」とも称されている。
　布の上に並ぶさらなる石たち。情熱を高めるインカローズ、知性・芸術の石アクアマリン、慈悲心のトルマリン、向上心を高めるペリドット、魔よけの石マラカイト、集中力のオブシディアン、宇宙から来たモルダバイト････。私たちの人生の長さから比べれば、気の遠くなるような時間を過ごしてきた石たち。自然石はそんな時間の記憶を持つのかも知れない。

　ところで実のところ、私は石の世界にはストーンパワー云々ではなく、その形、多面体から入ったのだった。プラトン立体とは、プラトン自身がいうところの火の正４面体、土の正６面体、空気の正８面体、水の正20面体、宇宙の正12面体という、いわゆる５つの正多面体の事だが、ダイヤモンドの結晶は基本的には正４面体のカタチだし、蛍石や黄鉄鉱の結晶、それから塩の結晶も正６面体だ。ミョウバンの結晶や磁鉄鉱や金剛石は正８面体だし、黄鉄鉱は正12面体構造にもなる。また貴鉄鉱は正20面体だ。
　そして形から入った私は今度はその色に魅せられた。なんと鮮やかな色、なんと深みのある色、なんと豊かな輝き、そしてなんという確かな存在感が石たちにはあるのだろう。