(421)神聖暦、農耕暦、そして金星暦

 マヤ人は多数の暦を併用していたと言われるが、その中でも基本として2つの暦を組み合わせて使っていた。すなわち1サイクルが260日の神聖暦ツォルキン(TZOLKIN)と、地球の1年に同期させた365日の農耕暦ハアブ(HAAB)である。光のマトリクスとも言われている260日周期の神聖暦の方は、20の「日文字」と13の「光の数字」の組み合わせからなっている。ホゼ・アグエイアスが創出した時間のゲーム「ドリームスペル」に則して言えば、20の「太陽の紋章」と13の「銀河の音程」の組み合わせだ。地球の1年と同期した365日の暦がこの目に見える物質的世界、もしくは顕在意識に対応する計時周波数だとすれば、260日の暦の方は目に見えない精神的世界、もしくは潜在意識に対応する計時周波数に比することができるだろう。前者が地球固有の3次元的サイクルに対応するとすれば、後者は銀河と同期する4次元的サイクルに対応する。この場合の地球とは現在の人間の意識の総体であるところの12で閉塞している物質的世界であり、銀河とは12をも内包しつつ13に反転している多重の次元を表す空間的な表現である。

 私たちは少なくとも、身体や5感で知覚する環境という外面的世界と、想像力や心理が働いている意識という内面世界の2重のリアリティを生きている。物理的世界を支配する光速度を超えないタージオン領域と、その現実を想像力という光速を超えた世界へと圧縮するタキオン領域と。しかしどちらにも偏することなくそのあわいを反転させて開くという姿勢が重要だ。重力を呪縛ではなく恩寵として扱い、意識を妄想や狂気ではなく共鳴する正気として用いつつ、全てが光であるルクシオン領域そのものを反転するということ。全てを飲み込むブラックホールと全てを創出するホワイトホールをつなぐワームホール。しかし実はこの私たちの現実世界こそがワームホールの中なのではないだろうか。現在の私たちは時満ちて安住の子宮を離れ、未知なる新世界へ生まれ出るべく、産道をゆっくり回転しながら進んでいる胎児なのではないだろうか。全方位がフラットな世界から垂直に立ち上がり、継ぎ目のない全体性を見るために新しい世界へ向かう途中の未生の胎児…。

 さて小難しい話ばかりをつぶやいていても始まらないので暦に話を戻そう。260日周期の神聖暦ツォルキンと365日周期の農耕暦ハアブの組み合わせからは、一体何日を異なる名前で特定できるのだろう。実はこの2つの暦の組み合わせからなる1周期は、この260日と365日の最小公倍数である18980日からなっている。そしてこの1周期をカレンダーラウンドという。この18980日のカレンダーラウンドは365日周期の農耕暦の52スピン、つまり地球の52年である。(ただし私たちが現在使っているグレゴリオ暦と比べて、13回ある閏年から生じる13日は含まれない。)そしてその間に260日周期の神聖暦の方は 73スピンする。

365×52=18980(日)
260×73=18980(日)

 自らの詩の中に様々な預言を書いているノストラダムスは、自分の預言の限界年を西暦の3797年であると明言している。この3797年という数は一見何の特徴もない。ところでこのカレンダーラウンドを構成する農耕暦の52年と神聖暦の73スピンの2数を掛け合わせると(52×73=)3796になる。これにもう一つの全体性を表す1を足した数が例の3797に等しい。私は彼の預言には関与しないし、いかなる解釈にも組みしない。またマヤと何らかの関係があったなどと言うつもりもない。ヨハネ黙示録中に出てくる神に記別を与えられた12支族の数144000人と、マヤの計時法の1バクトゥンが144000日であることとの数的一致を見て、だからこの2つには直接何らかの繋がりがあったと結論するのは早急である。ある神社の境内にカゴメ(6芒星)があったが、これはユダヤのダビデの星でもある。だからその昔日本人とユダヤ人は交流があった、などと性急に断定するような3段飛び的3段論法もしかり。時空を超えていても人間の精神構造が相似形に働けば、この3次元的な現実世界に同じような世界認識や自己進化が起きることは当然だろう。また全く同じ進化をしないというのも、異なる時空の場であればこれまた当然であると考えられる。現実にどの時代の過去や未来と共鳴しようとも、今ここで自分がどのように世界との関係で未来を創っていくかが重要なのである。

 ところでマヤ人は金星の動きも精緻に観察していた。金星の会合周期は584日である。別の表現をすると、今見ている明けの明星(もしくは宵の明星)が同じ時間に全く同じ位置にくるのは584日後だということである。今この会合周期を金星暦と呼ぼう。実はこの金星暦の65サイクルは先のカレンダーラウンドの2サイクル、つまり104年で位相が同期するのである。この104年は37960日だ。ノストラダムスの預言限界年−1は、このマヤの3つの暦の同期する最小公倍数の1/10と等しい。この数的シンクロニシティにあなたは何を見るのか、また何も見ないのか。パカル・ボタンの「テレクトノン」にある「全ては数字。神は数字だ。神は全てに存在する。」というフレーズも、数そのものが人間の精神構造とは別個に存在する永久不変の神なのではなく、人間の精神構造そのものが場となって形成する数と数との比率や関係構造そのものに神を見ていたのではないだろうか。神は変わり、数も変わる。私が変わり、神も変わる。マヤ人の精緻な金星の観測。

18980×2=37960(日)   農耕暦(365)×104=37960(日)
(2カレンダーラウンド)  神聖暦(260)×146=37960(日)
   金星暦(584)× 65=37960(日)